去年の今頃、久美浜湾に小船が漂流しているので回収してほしいという行政からの依頼。
漂流している古い木造船は、荒れた海で何度も沈みそうになりながら日に日に位置を変え海岸を漂っています。
<これが漂流船の正体>
依頼を受けて3、4日後、日中もそれほど気温が上がらず、夕暮れまでわずかな積雪も融けきらない寒い日。
やっと海が穏やかになったので回収作業に取り掛かることにしました。
回収はクレーン車では近づけないので、海上を曳航するために小型和船で直行。
漂流船には大きな穴が複数あり、船内にはたっぷりと砂が溜っていたため一人、「ふうふう」言いながら人力で砂をかき出し、持ってきたロープで2隻を繋ぎます。
そのまま引っ張って持ち帰ろうとしましたが、もしこの船が沖で沈んだら自分の船も巻き添えになるんじゃないかと嫌な予感!
気休めのつもりで、近くに流れついていた発砲スチロール製のスチロバール(浮き)を余ったロープで漂流船に繋ぎました。
あくまで気休めのつもりで・・・。
でもそれが後に危機的事態を救うことになるとは思ってもいませんでした。
<浅瀬からバックで沖に引っ張り出します>
浅いところから後ろ向きで深い方に徐々に船を引っ張り出すと、漂流船はひっくり返ってしまいましたが、そのおかげで船内に空気が溜り安定した浮力を保っています。
更に岸から離れて、体制を立て直そうとした瞬間、「ボコン」という鈍い音と共に再び船体が半回転してしまい、船内に溜っていた空気が抜けてしまったのです。
<船内の空気が抜けると一気に沈み始めます>
するといきなり引っ張っていた漂流船は海底に引き寄せられそうな状態に、
パニックになった私は自分の乗っている船のロープを解こうとしますが、ロープがきつく張り過ぎてほどけません。(><;
ロープの張を和らげようと、たぐり寄せると意外に軽い事に気が付き、よく見ると先ほど気休め程度に繋いだスチロバール(浮き)のおかげで、かろうじて沈没せずに持ちこたえていました。
<もうブイしか見えません>
もう、こうなったら神に祈るような気持ちでこのまま帰るしかありません。
ブイに繋いだロープがほどけないようにゆっくりと、早く帰りたいけど、ゆっくりと歩くより遅く、寒さで手の感覚がなくなってきても、ひたすら我慢して何とか自社の桟橋までたどり着くことが出来ました。
<無事に帰港できました 神様ありがとう!>
<船体にはいたる所に大きな穴が・・・>
引き上げた漂流船は偶然か意図的か、隔壁ごとに複数の穴が開き、ゴミが残って
いました。
<まるでゴミ箱です>
結局この船は税金で最終処分されました。
冬には海外からゴミ船が漂流しますが、久美浜湾内にもこんなことがあってビックリした事を思い出します。